心の家路

依存症と回復についてのスタディノート

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dependence:dipsomania

渇酒症

渇酒症(かっしゅしょう、dipsomania)は、アルコール症(alcoholism)の一形態で、長期の断酒と大量飲酒が交互に繰り返されるもの。周期性アルコール症(periodic alcoholism)とも呼ばれる。ジェリネックはε型アルコール症に分類した。

dispomania という用語は、19世紀においてはアルコールに関連した問題に対して幅広く用いられたが、その多くはこんにちのアルコール症に相当する。現在では周期性アルコール症のみを指して用いられる。[Dipsomania

IDC-10ではF1x.26に挿間的使用(渇酒症)の項目がある。

(真性の)渇酒症(dipsomania)は顕在あるいは潜在の精神障害によるものと考えられており、稀なものである。一方、一般的なアルコール依存症の症状として、断酒期間と大量飲酒期間が交互に繰り返されるパターンがあり、こちらは偽渇酒症(pseudo dispomania)と呼ばれる。

(真性の)渇酒症

(真性の)渇酒症とは、周期性アルコール症のうち、大量飲酒へと向かわせる渇望がアルコールによらずに生ずるもの。下記の偽渇酒症が、機会的な飲酒により(つまりアルコールによって)渇望が誘発され大量飲酒するのに対し、真性の渇酒症では飲酒を始める前に生じた強い欲求によって発作的に飲酒する。てんかんなどの精神障害との関係が疑われている。

昭和期の医師、増田徳幸は症例について、

その都度なんの理由もなく,まったく内因的におこってくる不機嫌に襲われ,その結果濫飲に陥っているものであり,Gauppの所謂渇酒症に相当するものと考える.このように平素は酒を好まず,なんら異様な感をあたえない人に,まったく内因的に不機嫌,濫飲発作が襲来し,この発作はながくとも数日で消散し,消散後はまた馬鹿なことをしたと後悔すること,なおかかる発作が何回も繰りかえし反復することからしてGricsingen,Westphal,Kraepelin,Aschaffenburg,Gaupp等独逸の学者の多くはこれを精神性癲癇発作の一異型として,説明しようとするのももっともなことと考える 増田徳幸(1957)1), p.1326 →「渇酒症の経験例について」 (岡山大学)

と記述している。

『アルコール辞典』での記述

DIPSOMAMIA 渇酒症
〔ギリシヤ語dipsa渇く+maina〕廃語.19世紀においては,アルコール症のこと.明確には周期性アルコール症のことで,確立されていないが神経学的または生化学的変化,あるいは心理学的な緊張から生じると考えられる衝動的な渇望による発作性飲酒の行動を伴うと考えられていた.WINGFIELD(1919):「真性Dipsomania.この比較的珍しい型にはいくつかの種類がある.全てに認められる特徴は,渇望が無意識的に起こり,しかもそれを誘発させるのにアルコールを必要としないことである.このような患者は偽渇酒症者(pseudo-dispomaniacs)のように発作的に連続飲酒する」形容詞:DIPSOMANIACAL=渇酒症の. ケラー・マコーミック (1987/1982)2), p.154

PERIODIC ALCOHOLISM 周期性アルコール症
長期にわたる禁酒または節酒と大量飲酒とが交互に行われるアルコール症(alcoholism).渇酒症(dispmania)とも呼ばれている.古い文献や時には現在でもヨーロッパやラテンアメリカではまだこの用語が使用されているが,アルコール依存が,随伴する精神障害と共に含まれるという場合には,弛張性アルコール症(remittent alcoholism)の意味にも使われている.Jellinekは依存の有無にかかわらずepsilon alcoholismという用語をこれと同じ飲酒の型に用いるよう提唱した.pseud-periodic alcoholismを参照.てんかん(脳性不整律(cerebral dysrhythmia))との関係が長い間疑われている.名詞のPERIODIC ALCOHOLICは,ときどきperiodic drinkerと誤って使われている. ケラー・マコーミック (1987/1982)3), p.43

参考

渇酒症に関する情報は少ないので、ネット上の情報をいくつか転載しておく。

渇酒症
数カ月ないし2~3年に一度、沈うつ、不快、憤怒などの状態が数日間続いてから急に飲酒しはじめる。いくら飲んでも不快で、ささいなことで激怒乱暴したり、連日連夜枕もとに酒を置き食事もほとんどしないで飲み続ける。
ついには疲労して長い深い睡眠におちいり、気分が正常に戻って終わる人がある。これが渇酒症である。平生は酒のにおいの嫌いな人がある。
原因
一種の先天性周期性精神障害と考えられる。ときにはうつ病などの精神病で、その不安、よくうつ状態を消すために一時的に激しく飲酒する人もある。
処置
いずれにしても早急に精神科医に相談し、本人の意思に反しても病院に収容し、即刻禁酒し、身体の衰弱を回復させないと、生命の危険をともなうこともある。
本日の健康予報4), 「病的酩酊:渇酒症」 (yu2372.net)
(何らかの精神衛生のテキストの複写であろう)

渇酒症 (dipsomania)
比較的短期間の大量飲酒期と比較的長期間の禁酒ないし節酒期が交代に出現するアルコール乱用の一型であり,19世紀以来の古典的用語である.てんかん,気分易変性精神病質あるいは躁うつ病などによる周期性の気分変調が,大量飲酒の引き金になることが多い.すなわち周期性に生ずる不機嫌あるいは抑うつから逃れるために飲酒を始め,ついには泥酔状態に至る.基礎疾患の適切な診断が正しい治療につながる.渇酒症は単一の疾患ではないため,精神科診断学用語としては,最近は用いられることが少ない. Seadict.com5), 「渇酒症」

②渇酒症
周期性に生ずる気分変調(不機嫌状態)にもとづいて数日ないし数週間にわたって飲酒を続けるもので、通常病的酩酊と異なる。躁うつ病、てんかんなどにみられることがあるが、一般に稀なものである。
  ――引用文献「精神医学テキスト」森 温理:医学出版社 レンズ(2009)6), 精神看護の軌跡「アルコール異常反応」 (webry.info)

偽渇酒症

偽渇酒症(ぎかっしゅしょう、pseudo dispomania)は飲酒を契機とした(つまりアルコールによって生じた)渇望により大量飲酒するもの。偽ε型アルコール症(ぎエプシロンがたアルコールしょう、pseudo-epsilon alcoholism)とも。

増田徳幸は、

本例では内因的と考えられる不機嫌が一次的にはみられず,飲酒の機会が動機となって大酒し,飲みかけるとどうしても自分では制止できず,みづからすすんで精神病院に入院を希望せねばならないほどの濫飲発作におちいる 増田徳幸(1957)7), p.1326 →「渇酒症の経験例について」 (岡山大学)

と症例を報告している

『アルコール辞典』での記述

PSEUDO-PERIODIC ALCOHOLISM 偽渇酒症 偽渇酒症.あるいはPSEUDO-EPSILON ALCOHOLISMともいう.飲酒を中止していたアルコール症者の中で,過度の飲酒に陥ることのあること. ケラー・マコーミック (1987/1982)8), p.FIXME

飲酒サイクルと偽渇酒症

γ型アルコール症では、初期から飲酒のコントロール喪失が現れるので、大量飲酒と断酒期間の繰り返しが早い時期から見られる。δ型アルコール症ではこうした周期性は目立たないが、末期になると身体的限界が来るまで連続して飲酒する連続飲酒発作が起こり、体がアルコールを受け付けなくなってしばらく断酒し、回復するとまた飲酒を再開するパターンを繰り返す山型飲酒サイクルが見られる [竹村道夫(2003)9)]。

このように一般的なアルコール依存症であっても、断酒と大量飲酒が交互に繰り返されるパターンが起こりうる。(真の)渇酒症は稀なものとされているにもかかわらず、本人あるいは家族が渇酒症と見なしていることが多いのは、このような飲酒パターンを渇酒症と取り違えている可能性がある。(つまり特異なタイプのアルコール依存症者はそれほど多くはないはず)。

関連項目

外部リンク

1) , 7)
増田 徳幸(1957), 「渇酒症の経験例について」 (岡山大学)
2) , 3) , 8)
M.ケラー・M.マコーミック (1987/1982), 『アルコール辞典 改訂第2版』, 津久江一郎訳, 東京: 診断と治療社, amazon.jp
4)
本日の健康予報, 「病的酩酊:渇酒症」 (yu2372.net)
5)
Seadict.com, 「渇酒症」
dependence/dipsomania.txt · 最終更新: 2013/09/28 09:37 by root