心の家路

依存症と回復についてのスタディノート

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dependence:diagnostic

依存症の診断基準

診断基準(diagnostic criteria)とは、精神疾患に信頼性の高い診断を与えるために作成された基準である。日本では主にIDC(国際疾病分類)が、アメリカではDSM(精神障害の診断と統計の手引き)が使われている。

操作的診断基準

操作的診断基準(精神疾患の)
操作的診断基準は、原因不明なため、検査法がなく、臨床症状に依存して診断せざるを得ない精神疾患に対し、信頼性の高い診断を与えるために、明確な基準を設けた診断基準である。操作的診断基準を用いて均一の患者群を抽出することによって、病態解明の研究や疫学調査を推進することに加え、治療成績や転帰の比較検討を可能にするといった意義がある。 塩入 俊樹(2013)1).
「操作的診断基準(精神疾患の)」 (脳科学辞典)

現在使用されているもの

現在使用されている診断基準については下記を参照。

(DSM-5については詳細が入手でき次第更新の予定)

DSM・IDCにおけるアルコール症・アルコール依存と乱用の変遷

APA(アメリカ精神医学会)のDSM、WHO(世界保健機構)のIDC、いずれにおいても初期にはalcoholism(アルコール症)はパーソナリティ障害・ノイローゼ(神経症)のカテゴリに含まれていた。

1977/78年のIDC-9、1980年のDSM-IIIにおいて、alcoholism(アルコール症)が除かれ、アルコール依存とアルコール乱用(有害な使用)の二つのカテゴリに分けられた。

2013年のDSM-5において、依存と乱用はアルコール使用障害に統合された。

DSM

1952DSM-Iこの二つの版ではalcoholism(アルコール症)はパーソナリティ障害、同性愛、ノイローゼ(神経症)のサブセットに分類されていた。
1968DSM-II
1980DSM-IIIalcoholism(アルコール症)が除かれ、alcohol abuse(アルコール乱用)およびalcohol dependence(アルコール依存)の二つに分けられた。
1994DSM-IV依存にサブタイプが設けられた。
2013DSM-5乱用と依存がalcohol use disorder(アルコール使用障害)に統合された。

IDC

1967IDC-8alcoholism(アルコール症)をパーソナリティ(人格)障害とノイローゼの分類に含めていた。
1977
1978
IDC-9アルコール乱用と依存に別の基準が設けられた。
1992IDC-10harmful use(有害な使用)の概念。

『アルコール乱用と依存の診断基準』

Alcohol Alert No. 30: 1995 (NIAAA)
Diagnostic Criteria for Alcohol Abuse and Dependence
アルコール乱用と依存の診断基準

診断とは、アルコール乱用や依存のような特定の状態を同定し、分類するプロセスである。アルコール乱用や依存の診断基準は、どのような行動パターンや生理学的特徴がそれらの状態の症状を構成するかについて、研究者の一致した意見を反映している1。診断基準によって、臨床家は治療計画を立て、治療の進展をモニターすることができ、臨床家と研究者の間のコミュニケーションが可能になる1。公衆衛生計画の立案者にとって治療機関の有効性が確保でき、保険会社はどのような治療を支払い対象とすべきかの判断が行え、これによって患者は医療保険の保証範囲を知ることができる1-3

アルコール乱用と依存の診断基準は長年発展を続けてきた。新しいデータが入手できると、信頼性・有効性・精度を高めるために研究者は診断基準を改定した4,5。今号の “Alcohol Alert” では、現在使われているアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計の手引き 第4版(DSM-IV)」に至るまでの、アルコール乱用と依存の診断基準の発展の足跡を辿る6。またアメリカ国内ではあまり用いられないものではあるが、世界保健機構(WHO)の「国際疾病分類 第10版(IDC-10)」についても比較のために簡単に述べる7

診断基準の進展

初期の基準

1940年以前に、少なくとも39の診断システムが存在したことが分かっている2。1941年、ジェリネックは(1980年までは)アルコール症(alcoholism)と呼ばれたものをサブタイプに分類する開拓的な理論を発表した2,8。ジェリネックはそれぞれのサブタイプごとに特徴的な身体的・精神的・社会的・職業的な損失を関連づけた2,9

APA(アメリカ精神医学会)の出版した『精神障害の診断と統計の手引き』初版(DSM-I)および第2版(DSM-II)を通じて診断基準が徐々に明確化された。この二つの版ではアルコール症(alcoholism)はパーソナリティ(人格)障害、同性愛、ノイローゼ(神経症)のサブセットに分類されていた2,12

DSM-IとDSM-IIの不完全さが理解されたことにより、研究基盤を確立するため、Feighnerによってアルコール症の診断基準が1970年代に作成された5,13。これは主観的な判断や臨床経験のみによるものではない、調査に基づいた初の診断基準だった5。臨床での使用を意図したものではあったが、むしろさらに実用的な診断基準を作成するために継続的な研究を奨励することを主な目的としていた5。数年後、EdwardsとGrossがアルコール依存のみに着目した8。彼らは依存(dependence)の本質的な要素は、飲料の探索行動、耐性、離脱、離脱症状を軽減・回避するための飲酒、飲酒への強迫感の主観的知覚、断酒期間をおいた後の再飲酒といった飲酒のレパートリーに限定しうると考えた8

DSMの診断基準

アメリカ合衆国の研究者や臨床医は、通常DSMの診断基準を頼りにしている。アルコールを含む行動障害の診断基準の発展は、1980年の『精神障害の診断と統計の手引き』第3版(DSM-III)の出版によりターニングポイントを迎えた14。DSM-IIIで初めて、アルコール症(alcoholism)が除かれ、アルコール乱用(alcohol abuse)およびアルコール依存(alcohol dependence)と名付けられた二つの異なったカテゴリに移行した1,2,12,15。さらに、それまでと異なり、DSM-IIIではアルコール乱用と依存は、パーソナリティ(人格)障害のサブセットではなく、「物質使用障害」のカテゴリに入れられた1,2,12

DSMは1987年に改版されている(DSM-III-R)16。DSM-III-Rでは依存のカテゴリが拡大され、DSM-IIIで乱用の症状とみなされていたいくつかの診断基準を含むようになった。例として、DSM-III-Rでは依存は、精神症状(耐性や離脱など)と行動症状(飲酒のコントロールの減弱など)の両方を含むと記述している17。DSM-III-Rでの乱用は、依存の基準を満たさないものの、飲酒に関連して身体的、社会的、精神的、あるいは職業的な問題が生じているにもかかわらず飲酒する者や、自動車運転に関連してなど危険な状況で飲酒する者を診断するための残余のカテゴリとなった17。Baborによれば、この概念化によって臨床家は、患者の行動が明確に依存に関連づけられない場合でも、意味のある分類をすることが可能になった18

DSMはさらに1994年に改版され、『精神障害の診断と統計の手引き』第4版(DSM-IV)が出版された6。物質使用障害のセクションは、研究者や臨床家によるワーキンググループだけでなく、精神医学、心理学、アディクションの分野を代表する多数の助言者の調和を目指して改訂された2。DSMの最新のこの版は、近年の論文調査、Epidemiologic Catchment Area Study(疫学的地域調査)の間に集められたデータセットなどの解析、DMS-IVの二つの試案のフィールドトライアル実施の集大成であり、こうしたプロセスの結果を伝達することで、診断基準について一致を得られたものが、この新版に含められた2,19

DSM-IVは過去の版同様に、依存(dependence)と乱用(abuse)という重複していない二つの基準を含んでいる。ではあるが、DSM-IVは過去の版とは違い、耐性と離脱の有無を基準として依存にサブタイプを設けている6。DSM-IVの乱用の基準は、アルコールの使用によって社会的、対人関係的、法的な問題が繰り返されているにも関わらず飲酒するものを含むよう拡大された2,4。加えて、DSM-IVはある種の疾患の症状、例えば不安や抑うつなどが、患者のアルコールや薬物使用に関係している可能性を強調している2

ICDの診断基準

アメリカ精神医学会が精神疾患の診断基準の各版を作成した同時期に、世界保健機関(WHO)では、アルコール乱用や依存に関連したものも含めて、世界中から死亡と疾病のすべての原因に関する統計を集計するために診断基準を作成していた1,4,20。その診断基準は国際疾病分類(ICD)として出版されている。初めて物質関連問題の分類が含められたのは、1967年に出版されたIDC-8であり、DSM-IおよびDSM-IIと同様に、アルコール症(alcoholism)とされていたものをパーソナリティ(人格)障害とノイローゼの分類に含めていた21。IDC-8におけるアルコール症は、挿間的大量飲酒、習慣的大量飲酒、および断酒時の離脱症状と飲酒への強迫感によって特徴づけられるアルコール嗜癖(alcohol addiction)を含んだ独立した一つのカテゴリとなっていた1

IDC-922,23ではアルコール乱用と依存に別の基準が設けられはしたが、この版では、それらの他覚症状(signs)や自覚症状(symptoms)は類似した用語で定義されていた1。Barborによれば、IDC-9では、依存を欠いたアルコール使用に対して、「健康への有害な影響という理由から、ひとつのカテゴリを設けるに値する」とした前提に価値があった1, p. 87

アルコール依存が現在の版、IDC-10の中心を成している1,2,7。この分類ではアルコール依存はDSMに似たやり方で定義されている。診断は相互に関連した心理学的自覚症状(例えば渇望)、心理学的他覚症状(例えば耐性や離脱)、行動の指標(例えば離脱の不快を和らげるために飲酒する)の群に焦点を当てている1。一方で「アルコール乱用」を含めたDSMとは異なり、IDC-10では「有害な使用」の概念を含んでいる。このカテゴリは、アルコールや他の薬物の使用に関連した健康問題が華商に報告されないことを意図して作成された1。有害な使用は、依存を伴わないが、身体もしくは精神に損傷をもたらす原因となるアルコール使用を意味している1

診断基準間のすりあわせ

DSM(精神障害の診断基準)は、主にアメリカ合衆国内で使用されている診断基準である。一方、IDCは(精神疾患を含む)すべての死亡と障害の原因を診断し分類するシステムである4。この二つの主要な診断基準おいて、以前の版ではアルコール乱用と依存を扱ったカテゴリに大きな違いがあることが批判されていた2。そこで、DSM-IVとIDC-10への改版にあたっては、世界の研究者によって、可能な限り他方と調和した基準が作られるよう努力が払われた1,2

この二つの主要な診断基準の間には依然としてある程度の相違が残っているものの、臨床を目的としてアルコール乱用と依存をどう特徴づけるのか、一致した見解にもとづいて改版されてきた18。これにより、臨床家、国際的な保健機関、研究者たちは、アルコールに依存し、乱用し、有害に使用する人たちを分類し、治療し、統計データを収集し、研究成果についてコミュニケーションができるようになった18


診断基準—NIAAAディレクター Enoch Gordis, M.D. による解説

研究者たちのコミュニティは、標準化された診断基準の実用性を以前から認めてきた。そうした診断基準は、アルコール依存症候群を示す症状の集合について一致した意見を提供し、世界中の研究者たちがどのような種類の疾患を研究しているのか明確にしてコミュニケーションすることを可能にした。

標準化された診断基準は臨床家にとっても同様に実用的であり重要である。アルコールの分野では、臨床家が診断を下すのに複数の異なった方法があった。時には同じプログラムに携わっている臨床家同士でも異なっている場合すらあった。標準化された診断基準を使うことが重荷に感じられることもあろうが、それには多くの利点がある。より有効なアセスメント(評価)と配置、プログラム間での診断の一貫性、各プログラムの有効性を計る能力の強化、最も必要とする人へのサービスの供給など。健康管理への監督が強化されつつあるなか、(当事者以外の)第三者的資金提供者たちは疾病に関する報告がより標準化されることを望んでいる。彼らは支払っている対象の条件を知ること、およびそれらの条件がプログラム間で共通していることを望んでいる。本誌(Alert)に掲載された標準的診断基準は最新の研究成果に基づいており、フィールド試験と幅広い論文の評価にもとづいて作成され、新しい知見を反映すべく継続して改版されている。どのような疾病であっても診断する役割は臨床家の判断に委ねられているであろうが、アルコール治療プログラムが、適切な治療を選択する上で、またその選択の根拠を第三者的資金提供者に説明する上で、標準的診断基準を用いるのが最善の選択である。


文献

(1) Babor, T.F. Substance-related problems in the context of international classificatory systems. In: Lader, M.; Edwards, G.; & Drummond, D.C., eds. The Nature of Alcohol and Drug Related Problems. New York: Oxford University Press, 1992. (2) Schuckit, M.A. DSM-IV: Was it worth all the fuss? Alcohol and Alcoholism. (Supp. 2):459-469, 1994. (3) Vaillant, G.E. The Natural History of Alcoholism Revisited. Cambridge: Harvard University Press, 1995. (4) Rounsaville, B.J.; Bryant, K.; Babor, T.; Kranzler, H.; & Kadden, R. Cross system agreement for substance use disorders: DSM-III-R, DSM-IV and ICD-10. Addic tion 88(3):337-348, 1993. (5) Feighner, J.P.; Robins, E.; Guze, S.B.; Woodruff, R.A., Jr.; Winokur, G.; & Munoz, R. Diagnostic criteria for use in psychiatric research. Archives of General Psychiatry 26(1):57-63, 1972. (6) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition. Washington, D.C.: the Association, 1994. (7) World Health Organization. The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines, Tenth Revision. Geneva: World Health Organization, 1992. (8) Edwards, G., & Gross, M.M. Alcohol dependence: Provisional description of a clinical syndrome. British Medical Journal 1:1058-1061, 1976. (9) Jellinek, E.M. The Disease Concept of Alcoholism. New Brunswick: Hillhouse Press, 1960. (10) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, First Edition. Washington, D.C.: the Association, 1952. (11) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Second Edition. Washington, D.C.: the Association, 1968. (12) Nathan, P.E. Substance use disorders in the DSM-IV. Journal of Abnormal Psychology 100(3):356-361, 1991. (13) Keller, M., & Doria, J. On defining alcoholism. Alcohol Health & Research World 15(4):253-259, 1991. (14) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition. Washington, D.C.: The Association, 1980. (15) Cottler, L.B.; Schuckit, M.A.; Helzer, J.E.; Crowley, T.; Woody, G.; Nathan, P.; & Hughes, J. The DSM-IV field trial for substance use disorders: Major results. Drug and Alcohol Dependence 38:59-69, 1995. (16) American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition, Revised. Washington, D.C.: the Association, 1987. (17) Hasin, D.S.; Grant, B.; & Endicott, J. The natural history of alcohol abuse: Implications for definitions of alcohol use disorders. American Journal of Psychiatry 147(11):1537-1541, 1990. (18) Babor, T.F. The road to DSM-IV: Confessions of an erstwhile nosologist. Commentary No. 2. Drug and Alcohol Dependence 38:75-79, 1995. (19) Schuckit, M.A. Familial alcoholism. In: Widiger, T.; Frances, A.; Pincus, H.; First, M.; Ross, R.; & Davis, W., eds. DSM-IV Sourcebook. Vol. 1. Washington, D.C.: American Psychiatric Association, 1994. pp. 159-167. (20) Grant, B.F. DSM III-R and ICD 10 classifications of alcohol use disorders and associated disabilities: A structural analysis. International Review of Psychiatry 1:21-39, 1989. (21) World Health Organization. Manual of the International Statistical Classification of Diseases, Injuries, and Causes of Death, Eighth Revision. Geneva: World Health Organization, 1967. (22) World Health Organization. Manual of the International Statistical Classification of Diseases, Injuries, and Causes of Death, Ninth Revision. Vol. 1. Geneva: World Health Organization, 1977. (23) World Health Organization. Manual of the International Statistical Classification of Diseases, Injuries, and Causes of Death, Ninth Revision. Vol. 2. Geneva: World Health Organization, 1978.

NIAAA (2010)2).
Alcohol Alert No. 30-1995 (NIAAA)

関連項目

1)
塩入 俊樹(2013), 「操作的診断基準(精神疾患の)」 脳科学辞典
2)
National Institute on Alcohol Abuse (2010), Diagnostic Criteria for Alcohol Abuse and Dependence MD: NIAAA
dependence/diagnostic.txt · 最終更新: 2013/11/01 11:59 by ragi