心の家路

依存症と回復についてのスタディノート

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dependence:characteristic

依存症の特徴

ここでは依存症の診断ガイドラインの項目を元に、依存症の特徴を扱う。

日本では精神疾患の診断と分類に世界保健機関(WHO)のIDC-10の診断ガイドラインが用いられる場合が多い。また、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-IVも使われる。

IDC-10には アルコール依存症候群 F10.2 が、DSM-IVには アルコール依存 303.90 が定められている。それぞれ6つ、7つ項目があり、うち3つ以上が過去12ヶ月のうちに起きた場合に診断することになっている。両者の項目には共通したものも多く、アルコール依存症(あるいは他の薬物依存症)の特徴を示していると考えられる。

ここでは、診断ガイドラインの各項目を取り上げつつ、依存症(dependence)の特徴を述べる。

注)下記の項目の引用にあたっては、物質依存を元に、「物質」をアルコールに、「物質使用」を飲酒に置き換えるなどの解説を加えてある。
注)依存症の診断を下すには、下記の項目のすべてが当てはまる必要はなく、3つ以上あればよい。詳しくは依存症の診断基準を参照。

依存症の特徴

強い欲望

IDC-10(a)物質を摂取したいという強い欲望あるいは強迫感。

アルコールを飲みたいという強い欲望(a strong desire)あるいは強迫感(sense of compulsion)。DSM-IVでは強い欲望そのものを項目に挙げていないが、他の項目(統制の困難や断酒の困難など)に反映されていると考えられる。

統制困難

IDC-10(b)物質使用の開始,終了,あるいは使用量に関して,その物質摂取行動を統制することが困難.
DSM-IV(3)その物質をはじめのつもりより大量に,またはより長い期間,しばしば使用する.

統制とはコントロールのこと。しばしばコントロール喪失(loss of controll)と呼ばれるが、すっかりコントロールが失われるわけではなく、コントロールの困難(difficulty)あるいは減弱(impairment)と呼ぶべきである。

IDC-10では

  • 飲酒の開始・・・いつ飲み始めるか。
  • 飲酒の終了・・・いつ飲み終える(飲酒を切り上げる)か。
  • 飲酒量・・・・・どれぐらい飲むか。

についてのコントロールを問うている。 DSM-IVでは

  • 飲酒の終了・・・はじめのつもりより長い時間飲む
  • 飲酒量・・・・・はじめのつもりより大量に飲む

ことによって、飲酒の終了と飲酒量についてのコントロールが困難になっていることを問うている。

DSM-IVの(3)では、AAで言うところの渇望(craving=飲酒開始後に現れる統制困難)のみを問うているのに対し、IDC-10では「飲酒の開始」の統制困難を問うことでAAで言うところの強迫観念(obsession=飲酒開始前に現れる統制困難)を含めている。

離脱症状

IDC-10(c)飲酒を中止もしくは減量したときの生理学的離脱状態。
DSM-IV(2)離脱,以下のいずれかによって定義されるもの:
(a) アルコールに特徴的な離脱症候群がある.
(b) 離脱症状を軽減したり回避したりするために,アルコール(または,密接に関連した物質)を摂取する.

離脱(withdrawal)症状とは、物質摂取を中止したり減量したときに現れる症状。禁断症状とも呼ばれるが、禁断(=完全に止めること)した場合に限らず、減量した場合にも現れるので離脱の言葉を用いる。退薬症状とも。

DSM-IVでは離脱として以下を挙げている。

  1. 自律神経系過活動(例:発汗または100以上の脈拍数)
  2. 手指振戦の増加
  3. 不眠
  4. 嘔気または嘔吐
  5. 一過性の視覚性,触覚性,または聴覚性の幻覚または錯覚
  6. 精神運動興奮
  7. 不安
  8. けいれん大発作

本人が「眠れないので睡眠薬代わりに飲酒する」あるいは「不安を鎮めるために飲酒する」と言っても、それは離脱症状としての不眠・不安を避けるための飲酒である可能性がある。

耐性の形成

IDC-10(d)はじめはより少量で得られたその精神作用物質の効果を得るために,使用量をふやさなければならないような耐性の証拠
DSM-IV(1)耐性,以下のいずれかによって定義されるもの:
(a) 酩酊または希望の効果を得るために,著しく増大した量の物質が必要
(b) 物質の同じ量の持続使用により,著しく効果が減弱

耐性(tollerance)とは、物質の使用を続けるうちにその効果が減弱していくこと。したがって、同じだけの効果を得るためには使用量を増やさねばならない。例えば同じ酩酊感を得るために飲酒量を増やす、など。

飲酒への集中・他への興味の減退・社会的責任の放棄

IDC-10(e)精神作用物質使用のために,それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり,その物質を摂取せざるをえない時間や,その効果からの回復に要する時間が延長する.
DSM-IV(5)その物質を得るために必要な活動,物質使用,または,その作用からの回復などに費やされる時間の大きいこと
DSM-IV(6)物質の使用のために重要な社会的,職業的または娯楽的活動を放棄,または減少させていること

依存症になる前に持っていた趣味に興味や関心を向けなくなる。大きな努力を払って酒を手に入れる。飲酒に時間を費やし、また多く飲んだ酒が抜けるのにも時間が要するので、他に振り向ける時間が減る。また、仕事や家族への責任や、社会的付き合いを放棄するようになる。

断酒の困難

IDC-10(f)明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず,いぜんとして物質を使用する.
DSM-IV(4)物質使用を中止,または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功のあること
DSM-IV(7)精神的または身体的問題が,その物質によって持続的,または反復的に起こり,悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず,物質使用を続ける

正常な人間ならば、飲酒が心身の健康を害していると分かれば酒をやめるだろうが、依存症者はきっぱりやめることが困難である。

嗜癖の復活とギャンブルの追加

IDC-10やDSM-IVに見られるように精神医学では依存症や嗜癖という言葉は、もっぱらアルコールを含む薬物(精神作用物質)の依存に対してのみ使われてきた。ギャンブル・性・食べ物・買い物などの障害はアルコール・薬物による障害とは別の項目に分類されている。またアメリカの一般社会における addiction の意味するところは、アルコールやドラッグへの依存のみを指す(例:アメリカ連邦政府による回復月間(Recovery Month)も alcohol and other drugs のみを対象としている。

しかしながら、2013年にアメリカ精神医学界(APA)が採択したDSM-5では、嗜癖(addiction)という言葉が復活すると同時に、その中に行動嗜癖(behavioral addiction)としてギャンブルが加えられた。この変更は2015年まで改版作業中のIDC-11に反映される可能性がある。これらの変更及びその影響について、詳細が分かり次第ここに反映させる予定である。

According to the APA, this change “reflects the increasing and consistent evidence that some behaviors, such as gambling, activate the brain reward system with effects similar to those of drugs of abuse and that gambling disorder symptoms resemble substance use disorders to a certain extent.”
アメリカ精神医学界によると、この変更は「ある種の行動(例えばギャンブル)が薬物乱用とほぼ同様に脳の報酬系を活性化させることや、ギャンブル障害の症状が物質使用障害の症状とある程度似ていることについて、矛盾のないエビデンスが近年増加したことを反映したものである」 Psych Central Professional (2013)1)
DSM-5 Changes: Addiction, Substance-Related Disorders & Alcoholism

dependence/characteristic.txt · 最終更新: 2013/09/16 16:27 by ragi